三十分で書いたクソ短編のせます

のんびりと、どこか分からないような気味の悪くも不思議と居心地の良い場所で微睡んでいた。するとはるか向こう側から微かな揺れが伝わってくる。揺れはどんどんずずん、どんどどん、どんどんずずん、どんどどんと激しくなり、最後には未曽有の大災害級の揺さぶりと化してしまった。これ以上は耐えられそうになかったので、たまらず別の意味で永久に手放しそうになっていた意識をなんとか手繰り寄せ、いとしい静寂に別れを告げる。

邂逅、進行、鈍行、蛇行、………ここはどこだろうか、まともに生活できる場所だろうか、生きられる場所だろうか、実は自分は既に死んでいるんじゃないのか、という様々な鎌首に怯えながら何とか目を擦り開けて情報収集をする。初めてアオスジアゲハを目にした子供のように寝ぼけながらもどうにか、ここは学校の教室である、といったある程度の確証は得られた。

というのも、周りを見渡してみると、あぁ、いるいる。いかにも古風で、規則、支配に対する服従の烙印にも等しい「制服」に体を締め付けられた、まだまだ成熟したとは言えない青色の果実があんなにも。「ぼく」は思わず顔を、ウデムシを初めて見た時と同じくらいに思いっきりしかめてやった。

御大層にも将来の展望を語り、テレビや雑誌に引っ張りだこのモデルより私の方が断然美しい、あの芸能人はクソだ、このモデルは性格が悪くて生理的に無理だ、最近自分の推していたアイドルが一家心中をした、などとばかばかしい言の葉を紡ぎ、コミュニケーションをしている「気になって」いる。

さも自分はコミュニケーション能力のある人間だ、流行りを押さえた「今」に生きる人間だと主張せんばかりに。

「このような馬鹿馬鹿しい会話に成長を残した状態で埋もれるなど、なんて愚かしいものだ」と内心でせせら笑っていると、

なあゴリライモ知ってるか!コモドドラゴンを丸齧りするとウェットティッシュが即座に腐るんだぜ!

なんとか地上へと帰ってきた「ぼく」に何を思ったのか、余りにも、余りにも支離滅裂な妄言をクラスで一際青いだろう~ありとあらゆる部分からむせそうなくらいに感じた~果実の一つが吐いてくる。「ぼく」のことをゴリライモというのもその妄言の一環なのだろうか。この奇怪な呼び名は恐ろしいことにクラスの一人ひとりで全く違うようだ。

ハリュンパリスくん!」だの、

唾液解析トンボじゃん」だの、もうそれについては話すのもはばかられるほどに飛び交っている。ここにいると自己が確立されずにキメラのようなものになってしまいそうな、どうしようもない、抗えるはずもない寒気に襲われて凍え死にそうだったので、「ぼく」は二度と動かないから死んだ、と脳すらも指令を出すのを諦めるくらいに恐怖に凍り付いてしまった全身を、それこそそこから砕け散りそうなくらいな勢いで無茶苦茶に動かして、今いるこの空間から飛び出した。

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

無茶苦茶に叫びながらあそこから走って逃げた。走った。ペプシマンの十倍速く、ウサイン・ボルトの三千倍速く。

先ほどの支離滅裂な羅列を吐いてきたクソ餓鬼どもはまったくどうかしている。「馬鹿馬鹿しい」をテレビ番組で潤沢な予算から忠実に再現しようとしてるようなもんだ。

あんなものの近くにいたら人生の損失に過ぎない。そう思い、家路につき、自室のドアを念入りに難攻不落の壁へと仕立て上げてやった。

安住の地は今ここに確立されたのだ。

「私」はここですっかり安心してしまい、ベッドへと打ち上げに失敗したミサイルのように突き刺さり、そのまま意識を手放してしまった。

 

その後、何者かに夜な夜な自分の根幹システムをしつこく改ざんされ、朝起きた時には全く別の人間にすり替えられてしまうことを、この時の私は知る由もない。